陽だまりにて (お侍 拍手お礼の四十八)

       〜 お侍extra  寵猫抄より
 


年明けと同時に、何だか急に寒さの等級が上がったみたいで。
元旦、初詣でまでは何とか保った暖冬も、
松の内が開けるや否やというあたりから、
あちこちで雪の便りが聞かれたり、
道路が凍ってのスリップ事故があったりと、
雪や氷の話題も増えて。
急に冬らしい寒さが押し寄せた観がある。

 「にあ。」

ガラス越しにかすかに届いた声に気がつき、
背後のリビングを振り向けば。
大窓の傍ら、陽だまりの中に、
ちょこりと座って外を眺める小さな存在があって。
それが冬毛か、長袖長ズボンになった、
ちょっぴりフリースみたいな起毛にもなった、
それでもやっぱり簡素な体操着みたいないで立ちの、
小さな小さな坊やがそこには居て。
金色の綿毛を陽に温めつつ、
こちらの様子をじいっと眺めている。

 「もうちょっと待ってておくれ。」

少しほど前にそこから庭へと出てった七郎次が、
だが、後に続きかかった小さな久蔵の鼻先で窓を閉めてしまったので。

 『遊んでもらえないの、どして?』 と、

当初はしきりと鳴いて訴えていたのが、
甘やかし好きな七郎次には何とも心臓に悪かったけれど。

 『お外はうんと寒いんだぞ?』

小さな仔猫、暖房の効いた室内にずっといた身だ、
急にこんな気温の中へ出すのは忍びない。
新聞を取りにという程度の、すぐに戻って来ることならいざ知らず、
急に冷え込んだので、
プリムラやシクラメンやら、鉢植えの幾つかを取り込みたかった彼であり。
昨夜のうちに気づいてやっとかなかった自分が悪いと踏ん切って、
お母さん開けてと言わんばかりに鳴いてた仔猫の声を背負いつつ、
テラスのあちこちから、小ぶりな鉢を幾つも集めて来。
元気のないのをまずはと選んでいる真っ最中。
そこからは動かない七郎次だったので、
どっかへ行っちゃうんじゃないのならと、少しは納得もしたものか、
久蔵もみぃみぃと鳴くのは収まったようだったが、
そこからじりとも動かないまんまという一途さには、
やっぱり何だか心苦しい七郎次だったりし。

 「…よっし。これとこれは大丈夫だから。」

やっと選定が済んでのこと、窓まで近づきカラリとサッシを開けたれば、

 「にぃあ…。」

いかにもお待ち兼ねというノリで、
待ってたの抱っこしてと、
すぐさま立ち上がって、こちらへ手を伸ばしかけた久蔵だったが、

  ―― ひゅるる〜〜ん、という

風籟乗せて吹いて来た北風に遇うと。

 「…。」

ぽわぽわぽわっと、金の綿毛を揺すられたのへ。
その頭から肩から ふるるっと総毛立ってのそのまま、
とととっと、お尻から後ずさり。
その態が…まるで、
怖いものに出会ってしまい、これは怖いぞ無かったことにしようとばかり、
一時停止になったあと、ぎこちなくも自分の行動を巻き戻して見せたかのような。
そんな心理が丸判り、何とも絶妙な間のよさだったので、


 「?? 七郎次? 廊下へ突っ伏すほどの何があった?」
 「みゅうう〜〜〜〜〜。///////」


さすがに恥ずかしかったか、
そして、それが転じての微妙に拗ねてのことだろか。
少々低めの声で不満げに鳴く仔猫が、
足元へと飛びついたそのまま懐ろまでよじ登って来たのを支えてやりつつ。
そちらは…その身を団子のように丸めたまんま、
何にウケたか、声も出せずに笑い転げる古女房へ、
キョトンとするばかりの勘兵衛様だったりする。




  〜どさくさ・どっとはらい〜  09.01.13.



  *拍手にも進出のキュウ猫噺でございます。
   一応、シチさんも気を遣って、
   お廊下までたかたかと逃げ出しての
   身を隠してから笑ってたのですけれどもね。
(どっちにしたって)
   いえね、急に寒くなったので、
   小さな鉢がたんとあるの、玄関の中に入れんとな〜っと思ったもので。
   ゼラニウムが異様な横ばいしてるのは、どう剪定したらいんですかね。
   この寒いのに蕾があるんで手をつけられなくて。


めるふぉvv
めるふぉ 置きましたvv **

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